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一度深呼吸し、腕に魔力を走らせる。
部分強化。体の一部だけ強化する魔力の消費が少ない身体強化魔法。
本来ならば、接近戦の俺は身体全体を強化する身体強化なんだが、今は腕しか使わないからこっちにした。
さっきまで筋肉痛で重かった腕が嘘のように軽い。
その状態で、再度刀を振るう。
今度は左から右へ。右足を踏み込みながら横に一閃。
遠心力に流されることなく振り抜いた。
さらに下段からの斬り上げ、斜めの袈裟斬り、おまけに突き。
言われた通りそれを10回繰り返す。
最後の一振りを終えて刀を正眼に戻すと、一息つくと同時に腕に流していた魔力を止めた。
重さ、痛み、疲れ。いろんなものがどっと押し寄せてくる。
俺は握っていた刀を消すや否や、倒れるように座り込んだ。
「おいおい。バテるにはまだ早いぞ。それに魔力使ったら意味がないだろうが」
隼人先輩が愚痴りながら近付いてくるが、生憎と返事をする余力がない。
そんな俺の様子を察してくれたらしく、先輩は呆れたようにため息を零して口を開いた。
「ったく、10分だけだぞ」
そう言った先輩は踵を返して嵐の所へ。
ありがたい。しっかり休ませてもらおう。
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