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まぁ、当然躱されたんだが……。
「ハハッ。さすがに警戒してるな」
横に躱した先輩は、俺から距離をとるように後ろに跳んで口を開く。
たぶん、膝蹴りのことを言ってるんだろう。
「そりゃあ、一度蹴られたことがあるんで」
大会中、あの男に蹴られたことを思い出す。
あんなのはもうゴメンだからな。
そのためにも……。
俺は力一杯地面を蹴った。
腕を交差し、同じタイミングで両腕を横に振り抜く。
1本の刀では左右から迫る攻撃を防ぐのは難しい。
かと言って、さっきの会話から、下に避けることもまずないだろう。
となると、残る選択肢は2つ。
上か、後ろか。
案の定、先輩は地面を蹴って上に跳ぶ。
しかし、この後の行動は予想外だった。
俺はてっきり、頭上を跳び越えて背後に回り込むものと思っていた。
けれど先輩はただ上に跳んだだけ。
俺が空振りした後、悠々と目の前に着地する。
「はい残念」
刀を振り上げる隼人先輩。
頭ではわかってるのに、体が動かない。
無情にも、先輩の刀は俺の左肩に向かって真っ直ぐ振り下ろされた。
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