大会の行方

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「いや、俺は名字の方が呼び慣れてるし、このままでいいだろ」 「…………」 蹴られた。脹脛(ふくらはぎ)を思い切り蹴られた。 「なら、身体に染み込ませるしかないようね」 そう言って今度は握り拳を作る如月。マズい、コイツがパンチ1発で済ますとは思えない。 「冗談に決まってるだろ、皐月」 仕方なく名前を呼ぶと、如月は小さくぼやきながら拳を引っ込める。女の子なんだから、もっとおしとやかにできないものだろうか。 まぁ、おかげでって言い方は変だけど、気恥ずかしくはなかったな。 チラッと目を向けた時に見た如月の横顔が、とても嬉しそうに見えたのは気のせいにしといてやろう。 気付けばそこはすでに寮。エントランスを通ってエレベーターに乗り込み、7階へ。途中で止まることなく目的の階に到着した俺達は、揃ってエレベーターから降りる。 特に会話がないまま廊下を進み、自分達の部屋の近くまで来た所で、今まで沈黙を決め込んでいた如月が口を開いた。 「そうそう。アンタだけ私の名前を呼ぶのは不公平だから、私も呼んであげる」 「へ?」 突然すぎて間抜けな声を出してしまった俺を抜き去り、如月は自分の部屋の鍵と扉を開ける。 「おやすみ、光輝」 言うや、彼女は逃げるように部屋の中に消えてしまった。 1人取り残された俺はゆっくりと鍵を開け、部屋の中へ。なんか、違和感がハンパない。これは慣れるまで時間がかかりそうだ。  
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