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振り向いた先にあった兵の顔は青白く、目は生気が感じられず虚ろげな光を宿していた…。
「……」
何なんだ…こいつは。着ているモノは間違いなく帝国の鉄板製鎧…つまり、今まで俺の指揮していた部隊にいたということ…。
だが、これは…。
「フヒヒ…呪術の中には秘薬と術を用いて相手を奴隷の様に操る方法がある…そうやって出来上がったのがそれだ」
狂喜に歪んだ口元から出た…勘に触る笑いが部屋にこだまする。
「貴様が部隊を編成し、何かしら行動を起こすだろうと踏んで…密かに紛れ込ませた我が僕よ」
「…まあよい、あの男は手出しできん…破滅の魔王よ、その生け贄の娘を好きにするがいい」
「そして我に…絶対的な力と王の座を」
「……ふん、いいだろう」
ズズッ…。
床に突き刺した剣を片手で抜き、剣の切っ先をソフィアの首元に翳す。
「止めろ、止めろーーー!!」
叫ぶことしか出来ない、歯痒い自分が情けない…。
俺があいつを巻き込んでしまった…俺の身体はどうなったっていい…あいつを、あいつだけは!!
「哀れな娘よ…我が糧となるがいい」
喉元に突き付けていた剣を構え直し、逆手にして突きの体勢をとった。
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