33人が本棚に入れています
本棚に追加
/84ページ
ヒュォン!ドンッ!!
鋭い風切り音と、突き刺さる鈍い音が響いた…。一瞬の静寂がその場を支配した…。
「…な、ぜ…?何故…私に、貴様の剣が…?」
「貴様がこの中で一番穢れた存在、それ故に貴様を生け贄に選んだ…貴様が用意していた犯罪者よりもさぞ穢れていることだろう…」
音も無くフワリとバルドスに近付くと、彼の腹部を貫いた漆黒の剣の柄を握り締め引き抜く。
ズルリと一気に引き抜かれた剣は、剣身が紅くなりバルドスの血に染めあげられていた…。
「…娘、お前の名を叫んでいた男のもとへ行ってやれ」
後ろを振り返ると…先程まで剣を向けられていた娘はしゃがみこみ、力無く虚空をただ見つめている…。
『…術を強制的に解いたからな…しばらくは放心状態のままか…。』
バルドスが床に倒れ、みるみる内に床が紅く染まっていく…。
青白い顔をした兵が抜き身の剣を構え、円陣を組みながら徐々に距離をつめる…。
「…このようなものを作りおって…これだから人間という生き物は面倒なんだ」
「ウゥー…アー…」
剣の刃先を床にガリガリと擦り付けながら、虚ろな目で近付いてくる。
最初のコメントを投稿しよう!