33人が本棚に入れています
本棚に追加
「メリル…入るな」
俺は後からついてきたメリルに、この光景は見せない方がいい…いや、見せるべきではないと判断し彼女を部屋の外に待機させる。
「今こそ我等、帝国の力を示す時!魔王覚悟!!」
ウオオオォォォーーー!!
帝国兵が人海戦術に走り、魔王へと向かっていく。
「…未熟」
顔はフードで見えないものの、落ち着いた声と右手に握り締めた剣から放たれる寒気にも似た気配…。
「…強い」
俺はこの魔王と呼ばれた漆黒の男と、まだ刃を交えてはいない…だからこそ感じる恐怖心…。
帝国兵の1人が、魔王の振りかざす水平斬りの剣閃を辛うじて防ぐも…剣ごと切り裂かれる。
その勢いを利用して、背後で上段の構えをする兵の胴を切り払った。
動きに無駄がない…流れるような剣の動きは、止まること無く次々に迫る兵を斬り刻む。
床に1人、また1人と帝国兵が鮮血の飛沫をあげ倒れていく。
勇んでは挑み、散っていく仲間を見て…勇む者はやがて怯む者へと変わっていく。
そうなるのにさほど時間を必要とすることはなかった…。
この部屋から逃げるには…部屋の入り口にいる俺達を倒すこと。
最初のコメントを投稿しよう!