泥臭くても

2/7
前へ
/354ページ
次へ
酔った、久しぶりに。 途中で抜けるつもりだった飲み会だけど、突然の御大の登場で帰るにも帰れなくなった。 学生時代からずっと憧れ続けてきた芸人さんだ。 嬉しくて楽しくて、でもすごく緊張して、俺らしくもないペースでビールを飲み過ぎてしまった。 今は春日になかば無理矢理連れ込まれるようにして、タクシーの後部座席に揺られている。 酔いのせいで体中がダルくて、春日に体全体をもたれかけさせるようにして。 「おまえがタクシーなんて珍しいじゃねえか。え?」 「フフフ・・・それはね、ばばん!」 いつもの気持ち悪い笑顔を俺に向けながら、ポケットから取り出したのはタクシー券。 「今日は収録が長引いたのでね、こんな良いモノをいただいたのだよ」 ・・・ハー、やっぱな。んなことだと思ったよ。 車内のラジオからは、とある放送作家さんの声が流れてくる。 今日は昨今のお笑いブームをテーマに、独特の語り口で聞き手をうまくひきつけている。
/354ページ

最初のコメントを投稿しよう!

419人が本棚に入れています
本棚に追加