泥臭くても

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「おぅ、大活躍だな」 小学生の頃、テレビをつければこの人の笑顔があった。 とにかく憧れて憧れて、初めて番組で一緒させてもらったときはとことん緊張した。 でも、最後にとっても素敵な言葉をかけてくれたんだ。 とにかく嬉しくて嬉しくて、心の中で何度もその言葉を反芻したんだ。 お笑いの大物としてはもちろん、今は世界に誇れる映画監督だ。 俺もずいぶんあの人の映画は見ているけど、一番印象に残っている作品は、やっぱりあれだな。 主人公は2人の高校生。 一人はケンカ早くて、いきがってて、頭で考えるよりまず行動するタイプの兄貴分。 もう一人は無口で、なんかいつも影みたいのせおってて、兄貴分についていく弟的な存在。 2人はもてあました情熱をあざ笑うように、授業をさぼったり、かつあげしたりしながらくだらない日々を送っている。 ある日兄貴分はケンカでボクサーに負けて、自分もボクサーになってやると息巻いてジムに通いだす。 弟分は何も言わずに自分もついていく。 ところが、頭角をあらわしたのは弟分のほうだった。兄貴分は、挫折した。
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