真夏の夜の夢

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「・・・気持ちわりぃ」 さすがにあれだけハイペースで飲んで、そのままタクシーに揺られていると なんだかちょっとマズい感じになってくる。 家まではあと5分くらいだろうか。歩けば20分くらいかな。 でも降りてだらだら歩いて行くのもかったるいしなあ。 なんてことを考えていたら、春日はさっさと「ここでいいです」と タクシー券にサインをして運転手に渡してしまった。 のそのそと降りると、後から降りてきた春日が自分の荷物をおもむろに俺に渡して 背中を向けて前にしゃがみこんだ。 「なんだよ」 「いいから、ほれ」 おんぶしてやるから、という仕草をしてみせる。 「なっ・・・いいよ、んな、恥ずかしいだろ、いい大人がよぉ」 「はやくしなさいよ、こうやってる方が恥ずかしいでしょ」 その広くてあったかい背中にへばりつきたい。 春日の体温をもっと体全体で感じたい。 そんな衝動を「あと20分たらたら歩いていく自信がないだけ」という言い訳の奥に 押し隠して、しおしおと春日の背中にのしかかった。
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