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何も変わらない、くだらない日々が待っているであろう高校に、俺達は
何の疑問も持たずに進んだ。
やりきれないほどに鬱積したエネルギーを発散させるためなのか、
春日はアメフト部に入ることにしたという。
そして、俺もそうしようと思った。
「なあ、春日。俺もアメフト入るかも」
そういうと、春日はちょっと眉間にシワを寄せて、うむ、と考え込んだ。
数秒考え込んだあと、こう言った。
「ランニングバックなら、いいんじゃないか」
アメフトのルールなんて良く知らなかったけど、始めてみたら春日の言葉の意味がよく分かった。
防具をつければ俺も春日みたいに逞しくなれる、なんて思っていたけど、それはまったくの間違いだった。
肩幅も体重も俺の倍はあるんじゃないか、みたいな男達が汗を飛ばして本気でぶつかりあう迫力。
その圧倒的な威圧感の中、俺はボールを持ってちょこまかと走り、パスをつなぐ。
春日は、そんな俺を敵から守るディフェンスエンドだった。
3m走なら誰にも負けねぇ、なんて自分で言ってたくらいで、瞬発力には自信があった。
春日が、俺を守る。俺は走る。
春日が、敵を受け止める。俺はそれをすり抜ける。
いつも俺の前にはあいつの背中があった。大きくて、広くて、揺ぎ無いあいつの背中が。俺は、だからいつも安心して、前に進んでいくことができたんだ。
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