Base Story

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松本さんは若林を認めてる。 きっとそうなんだろう。○○な話だって、すべらないだって、松本さんの一声で呼ばれたはずだ。 それはすごく嬉しいし、誇らしい。 でも、だ。松本さんからも、どうにも土屋さんや杉山さんから感じる空気を、僕は感じてしまった。 僕の勘は、当たらないこともあるし、外れないこともある。 でも、こと若林君のことに関しては、ちょっとした自信がある。 松本さんだって結婚したばかりなんだから、そんなわけない? いや、古今東西、男ってそういう生き物じゃなかったか? 恋人がいたって、奥さんがいたって、より魅力的な誰かがそこにいれば、ついつい引き寄せられてしまう。 それが男の性(さが)なんじゃなかったか。 ときどき若林に向ける、松本さんの優しい視線。 あれは、若林を好きな男達の目だ。間違いない。 俺はあんな目をたくさん見てきた。 土屋さん、杉山さん、藤本さん、松田さん・・・ そして、春日。 あいつは、いつもその視線を若林に向け、そして、若林からの同じ視線を一人で独占してきた。 そう、若林からのあの視線を受けられるのは、春日だけなんだよ。いつだって。 ふと横をみると、若林がいつもより早いペースでグラスを空けているのに気がついた。 やっぱり緊張しているんだな。そりゃそうだよ、雲の上だと想ってきた芸人さんが隣にいるんだ。 嬉しくて、興奮して、ちょっとだけいたたまれなくて、ついついグラスに口をつけちゃうってもんだ。
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