419人が本棚に入れています
本棚に追加
松本さんは若林を認めてる。
きっとそうなんだろう。○○な話だって、すべらないだって、松本さんの一声で呼ばれたはずだ。
それはすごく嬉しいし、誇らしい。
でも、だ。松本さんからも、どうにも土屋さんや杉山さんから感じる空気を、僕は感じてしまった。
僕の勘は、当たらないこともあるし、外れないこともある。
でも、こと若林君のことに関しては、ちょっとした自信がある。
松本さんだって結婚したばかりなんだから、そんなわけない?
いや、古今東西、男ってそういう生き物じゃなかったか?
恋人がいたって、奥さんがいたって、より魅力的な誰かがそこにいれば、ついつい引き寄せられてしまう。
それが男の性(さが)なんじゃなかったか。
ときどき若林に向ける、松本さんの優しい視線。
あれは、若林を好きな男達の目だ。間違いない。
俺はあんな目をたくさん見てきた。
土屋さん、杉山さん、藤本さん、松田さん・・・
そして、春日。
あいつは、いつもその視線を若林に向け、そして、若林からの同じ視線を一人で独占してきた。
そう、若林からのあの視線を受けられるのは、春日だけなんだよ。いつだって。
ふと横をみると、若林がいつもより早いペースでグラスを空けているのに気がついた。
やっぱり緊張しているんだな。そりゃそうだよ、雲の上だと想ってきた芸人さんが隣にいるんだ。
嬉しくて、興奮して、ちょっとだけいたたまれなくて、ついついグラスに口をつけちゃうってもんだ。
最初のコメントを投稿しよう!