清明 ~出会い~

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「今時って感じだけど、その子ラブレターを渡そうとしたの。だけど、完全無視。受け取らなかったんだって。そんでもって、すぐにどっか行ちゃったらしいよ。」 「……マジ?」 「どうする。告る?」 「いや、ちょっと…遠慮しとこうかな。」 校庭では、サッカーボールが四方八方に飛び、あちらこちらから声が飛んでいる。 俗にいう朝練という奴か。 桜を見る視線は変えない。 周りの声は聞こえてこない。 こんな時間はとても幸福に感じる。 一人が、落ち着く。 他の人たちは、俺のことをよく人間不信だとか、根暗だとか言う。 けど、それを変えようとは思わない。 いや、変えちゃいけない。 俺は今までも、この先もずっと、こういう風に生きる義務がある。 と、たまには悲観的になってみる。
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