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まだ半分残る煙草を灰皿に投げ捨て、じゅっと音がしたのを確認し喫煙所を出た。
朝礼で、若いメーカーたちと軽く話す。
適用証の変更、包装変更の商品‥毎日同じことの繰り返しのようで日々違う内容を頭に入れる。
医薬品卸売業者のセールスになって8年目。
長いようで早い一日を働くだけ働いている。
来る日も来る日も車を走らせ、俺たちの存在意義ってなんだ?と思う間もなく数字と戦っている。
それ以外のことなんて二の次で、気付いたら30歳を過ぎていた。
朝礼を終え、それぞれの専用車に乗って会社を出た。
今日は忙しいと、覚悟をしていた。
おそらく帰るまで煙草はもう吸えない。
アポの確認、回らなくてはいけない得意先。
一つ一つの仕事を丁寧に、迅速に、安全運転で。
1時半からのアポに間に合うように、今日は何も起こらないで欲しいと願う。
緊急の電話一本で予定が狂うことなんてざらで、それにどう対応するか、世間の目は厳しい。
細かい仕事をどれだけこなせるか、その積み重ねが数字になる。
実際はそれが直結することなんて無いのだが‥。
でも、俺はそう思う。
いつどこで、どんな風にチャンスが転がってるかなんてわからないのだ。
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