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「なにか‥あったんですか?」
「え?」
何が?と聞かれたことの意味がわからないようだった。
普通人間は何かなきゃ泣かないと思っているのは俺だけではないはずだ。
それでも不思議そうな彼女の顔に自然に微笑んでしまった。
「天気も良いし、少し外歩きませんか?」
俺がそう言うとちらっと腕時計を確認した。
「あ‥時間無い?」
「いえ‥少しなら。」
「‥じゃあ、行きましょう。」
小さく頷いた彼女は少しも警戒していないようだった。
『田端隼人、24歳です。』
『‥カサハラ‥ミウ‥20歳‥ハンカチ、洗って返します。』
『いえ、大丈夫ですよ。捨ててもいいですから。』
『いつか、‥返します。』
『じゃあ‥いつか。』
笠原美羽と出会ったのはもう7年も前になる。
『出会った』なんていう大げさな表現は正確な意味では正しくない。
彼女にはその認識はおそらく無いからだ。
それでも一瞬にして恋に落ちた。
何年経っても、これからもずっと、この気持ちは変わらない。
END.
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