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「なっ、俺ってなかなか強いだろ亜弍?」  振り返ると、倒れていたはずの大尉が拳銃をパンクの眉間に突き立てていた。 「これなら逃げれらんだろ!死ね!」  大尉がトリガーを引き、 【超ハイスピード】  撃鉄がゆっくりと降りていく。パンクは拳銃を持つ右腕を捻り、銃口を大尉の喉仏に向けて背を向けた。兵隊さん、さようなら。  パアンという軽い銃声が響いた。 「あっ、ううっ。うふぁ」と大尉は呻きながら地面にへたり、帽子のツバを撃ち抜いた拳銃を見て呆けていた。どこから現れたか、釣吉が大尉の前に座る。 「辛粕殿、辛粕正彦大尉殿。いやしかし、大尉は奇妙な遊びをなさる。町衆に迷惑がかかりますので、商店街で遊ばれるのはご遠慮願いたい」  辛粕大尉の呆けた目がじわりと焦点をあわせた。バツが悪そうに苦笑いをしながらズボンに付いた土を払う。 「魚田、済まないな」 「いえ大尉、魚を接収してお帰り下さい」 「いや、今日は魚はやめておこう。おい、帰るぞ!お前らいつまで地面と睨めっこしてる気だ?起きろ!」  辛粕大尉が号令を掛けると、兵士たちはヨロヨロと立ち上がり、何人かは腕を撃たれ呻く兵士を抱えトラックに乗せた。 「おやおやおや、これはこれは。偉大なる帝国陸軍の小隊が青年一人と鉄砲で遊んでいたのですか?兵隊さんは退屈してるんですねえ」  米屋の軒先にいる、白衣を着た集団の先頭に立つ男が、湿度のある笑い声をあげながら出てきた。 「ふん、ゴミみたいな学者風情が何を偉そうに」 「大尉、その拳銃もオートバイもトラックも、ゴミみたいな学者が作り出したのですよ。ご存じない?」 「俺の命令一つで、お前の命なんかどうにでもなる。知らないのか?」  白衣の男は更に大きく声を出して笑い、「辛粕、お前が私を殺せるわけない。殺してみろ。さあほら、私の心臓はここだよ」と白衣をはだけて胸を広げた。 「湯乃川秀樹、お前が帝国大学教授なのはとても残念だ。しかもお前は世界で指折りの理論物理学者ときてる。そんな偉い教授様を侮辱されたからと、簡単に殺すわけにはいかない。だからお前は、定年後に殺してやる!退官当日早朝に銃殺だ!」
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