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 爆音を残しサイドカーは走り去り、兵士を乗せたトラックが続いた。 「なに最後に格好つけてんだよ、この盗人誘拐未遂犯が!」 「パンク、今日は店仕舞いだ。ところでお前、とんでもなく早い動きをしたが、あれはなんだ?」 「なんだおっさん見てたのかよ。俺にもよくわかんねえんだけど、なんか動けるんだ」  釣吉はしばらく足で地面をトントンと叩き、口は小さく声にならないような呟きを繰り返した。 「おっさん?どうした頭の中が痒くなったのか?話が終わったんなら、店に戻るんだけど」 「今夜、一緒に会合へ出てくれんか?そのとき詳しく話す」 「別に構わねえよ。どうせ夜はやることねえし。んじゃま、店番してくるわ」  パンクは魚正軒先へと小走りで駆けていくと丸椅子に座りったが、床の汚れが気になり洗い始めた。ホースで水を掛け洗剤を撒き、デッキブラシで擦る。  亜弐は刺すような目で釣吉をジッと見て、「お父ちゃん、兵隊さん助けたやろ。うち、見てたで」と呟いた。 「さあ、知らんな。ほら、亜弐も片付けしてきなさい」  なんとなく訝しげに釣吉を数秒見たあと、亜弐は小走りに店へと急いだ。 「あなたは神を、信じますね?」 「うわ!なんだよいきなり吃驚すんじゃねえか!信じますねってなんだよ!」  パンクの背中から声を掛けてきたのは、とても若い宣教師だった。肌が黒く、丸みを帯びた柔らかそうな指。背丈ほどの巨大な十字架を抱えている。 「神はあなたの傍にいますね。あなたの心の中に住んでいますね。悩むとき、心苦しいとき、迷ったとき、いつでも相談ね」  宣教師はパンクに名刺を渡してから去った。が、パンクの手は濡れていたので名刺の端がふやける。 『朝来村教会 キングス牧師』  パンクはその名刺をレジの横に置いた。 「亜弐、なんだありゃ?」 「布教してはるんやけど、ついでに埋蔵金も探してるて、お父ちゃんいうてたよ」  朝来村唯一の寺である高辻寺は市を抜け田畑の畦を通り山間の氷室傍にあり、本堂は廃寺みたいに朽ち果てていたが隣の能舞台は手入れが行き届いていた。  夜、ロウソクの火が本堂に灯る。
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