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「能舞台は立派な癖に、なんかこっちは埃っぽくて仕方ねえな」
「あっちは秋の祭に使うから、若衆が時折手を入れてるんだ」
「でさ、まだなの?」
「もうじき来る」
階段を登るギリ、ギリリという軋む音が聞こえ、静かに戸が開いた。恰幅のよい腹の持ち主がぬうっと顔を出した。
「待ったかね」
「随分と待ったぜ、村長さんよ」
「パンク、村長殿に失礼だぞ」
「いやいや待たせて済まぬな」というと村長の地頭は、パンクと釣吉に小さく頭を下げてから座り「では早速、本題に入らせてもらうよ」というと懐から一円紙幣百枚を渡した。
「願い事があるんだが、話は釣吉から聞いておるか?」
「いや、知らね。俺は会合があるから来いっていわれただけだぜ」
「釣吉、困るぞ」
「地頭殿、申し訳ありません。中身が中身だけに、なるべくなら人のいないところで話をしたいと思いまして」
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