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「まあいい。ではワシから話をさせてもらう。もうお気づきだとは思うが、我が朝来村には良からぬ連中が、良からぬ噂を聞きつけてたむろしておる」 「帝国陸軍と帝国大学の学者はさっき見たぜ。あと、宣教師」 「それだけではない。海外スパイ、一匹狼の犯罪者、村上水軍までもが良からぬ噂を聞き集まって来ておる。他にも色んなのがおるみたいだが、詳しいことはわからん」 「それで、俺にどんな願い事があるってんだ?」 「こいつらを退治してもらいたい。旅の人、そなたはかなりの腕前を持つと聞いたのでな。どうか願いを聞いてくれ」  地頭は両手をつき頭を深々と下げた。が、パンクは苦い虫を噛み砕いたように顔をしかめている。 「そりゃ無理だ。退治なんて出来ねえよ。第一そんな義理もねえし」 「そこをなんとか」 「その金を奪って逃げるって手もあるんだぜ」 「パンク、お前は父親を探し歩いておるんだろう?地頭殿は人望のある方で、至るところに顔が利く。人探しなぞ容易なことだぞ」  釣吉の言葉を聞いて、パンクの体がピクリと動いた。 「本当か?」 「本当だ。日本放送協会のラジオ放送で、そのニック・チナスキーの人相を読み上げてもらうという方法もあるし、読売朝日大阪毎日の紙面で人探しをすることも出来る。どうだ、悪い話ではなかろう?」  パンクは数秒間目を閉じ、眉をピクリと動かせてから目を開く。 「わかった。手伝わせてもらうぜ。その代わり俺の親父探しを手伝えよ」  地頭の口許が緩み「ワシは約束を守る男でな。早速手配させてもらうよ」といったあとでパンクに札束を渡した。 「すげえ大金だな」 「パンクとやら、それは当座の費用だ。好きに使いなさい」
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