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「お前ら、探し物は見つかった?徳川家隠匿の財宝は、見つかったか?」
パンクは両手をジーンズに突っ込み、店内をゆっくり歩いた。八人掛けの丸テーブルが左右三脚ずつ、奥は一面カウンターで両端には階段があり二階席は吹き抜けになっている。
無数の目がパンクを捉える、唯一の例外を除いて。
奥のカウンター、ビールサーバー側の隅に辛粕大尉がいた。背中を丸めてタイムサービスのテンダーロインステーキを頬張りビールで流し込んでいる。パンクには気がついていたが目を向けない。
「まだ誰も見つけてねえんじゃねえか?なあ軍人さん、帝国陸軍を総動員しても見つかんねえんだよなあ」
切れ味の悪いナイフだった。力を込めないと肉が切れない。辛粕は右腕をややあげ、力を入れやすくした。
「無視すんじゃねえよ辛粕。徳川家の埋蔵金は見つかったのかと聞いてるんだよ」
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