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【超ハイスピード】  ゾルゲンはペン先をパンクの首に突き刺そうと、ゆっくりと手を伸ばそうとしている。パンクはゾルゲンの腕を下げ、ペン先を太股に刺してからカウンターの上に立った。 「グアッ、グアッー、グアッ」という蛙の鳴き声に似た声を絞り出すと、ゾルゲンは眠りだした。速効性の睡眠薬か。 「見え透いた技使うんじゃねえよ。さてさて、今から本題だ」  パンクはポケットから折り畳まれた紙を出し、全員に見えるように掲げた。 「これがこの村に代々伝わる徳川埋蔵金の地図だ。高辻寺境内に隠匿されてたのを、俺が発見したんだぜ。で、これをだな」  視線がパンクの持つ紙に集中する。物欲でギラギラ光った目だ。パンクが紙を広げると視線の輝きは頂点に達した。  が、すぐに落胆の溜め息がもれた。書かれた側を隠しながら、紙をまず半分に破る。それを重ねてまた半分に破り、さらに重ねて半分に破った。 「俺は埋蔵金に興味ねえから破ることにした。で、これを更にだな」  二階から薄汚れた服を着た男が一人、地図目掛けて飛び、 【超ハイスピート】  手がゆっくりと破いた地図へと延びていく。パンクはカウンターから降りて破いた紙片をシャッフルしてから六枚を床に置き、残りの二枚をジーンズのポケットにねじ込んだ。  ゴツン、という墜落音がカウンターから聞こえた。「すげえ、瞬間移動だ!」という声が無数の目の中から放たれる。 「ここに地図を置いた。欲しい奴は勝手に持っていってくれ。俺は埋蔵金なんか本当に興味ねえんだ」といってからパンクは開き戸へと歩く。  パンクが背を向けた途端、床の地図の断片に奴等が殺到した。肉と肉が衝突する湿り気を帯びた音が響く。  これでよし。六つの偽地図の断片を巡る奴等の混乱。 「待てパンク!」という声が、開き戸を抜け外に出たところで聞こえた。湯乃川秀樹が無理矢理顔を歪ませて微笑んでいる。 「なんか用かよ。徳川埋蔵金探して研究費の足しにでもしろや。素粒子加速器とか量子コンピュータとか高速増殖炉とか、そんなの作りたいんじゃねえの?」 「お前に用はない」 「アホか、用がないなら呼び止めんな。じゃあな」といい手をあげて歩きだそうとした。 「お前の脳に用がある。南方鹿楠博士、お願いします」
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