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「おっさん、そりゃ悪くいいすぎだろ。俺は単なる通りすがりの旅人だぜ」  魚田の目が一眼レフカメラの魚群レンズのようにパカリと見開いた。 「兄ちゃん、嘘だろ?本当は、お宝目当てだろ?兄ちゃんみたいな女にモテそうな男前ハーフが、なんの理由もなくこんな糞田舎に来るわけないだろ」 「嘘じゃねえよ」 「棺桶引きずる奴のことを信用しろというのか?」 「これは荷物入れだよ。いや、本当なんだってば!本当に俺は旅してんだ。人を探してんだよ」  というとパンクはジーンズのポケットから財布を出し、一枚の紙を釣吉に渡した。 「これは?」 「俺の親父、ニック・チナスキーだ。ユダヤ人でドイツ出身。ここいらで見たことないか?」  釣吉は一瞬眼光が鋭くなった体が強張ったがすぐ元に戻り、首を横に振りながら紙をパンクに返した。 「見たことないな」 「そうか、残念だ。ところで話は戻るんだけどよ、酒場の場所を教えてくんないか?」 「まあ座れ」といって釣吉は丸いパイプ椅子を出し、続けて「刺身食ってけ」といってから、商品棚に置いてある短冊のハマチを分厚い目に切り出した。 「あの、俺、金無いぜ」
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