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土間を抜けると奥には小さな中庭があり、井戸と六畳ほどの離れがある。
浴衣姿の娘が井戸から水を汲んでいた。青い血管がうっすらと浮くくらいに抜けるような色白で、印象に残る細く濃い眉毛。華奢な首。
「お父ちゃん、その人誰?」
「新しい手伝いだ。仲良くしろよ」
「おっさんの娘かよ、ベッピンじゃねえか」
釣吉の娘、亜弐は頭に浮かぶ英語を必死に並べた。
「マ、マ、マアネームイズ、アジウオタ。ア、アイワズボーン、インダ、アセクビレッジ」
「名前は魚田亜弐で、朝来村生まれか。よろしくな」
「マ、マ、マイコー、ドゥユーハブエニィピクチャー?ノー、アイハブント」
「絵の話なんざしてねえし、俺はマイケルじゃねえぜ。変な英語使うのが流行ってんのか?こう見えても俺は日本育ちだぜ」
「なんや日本語通じるんや。緊張して英語つこうて損したわ。でもほんま、ハーフっぽい顔やね。その棺桶なにやのん?」
「荷物入れ。着替えとか入ってんのよ」
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