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大尉はトラックの兵士に号令をかける。
「ちょっと待てや!昼間から堂々と強盗すんじゃねえよ軍人!」
「強盗ではない、接収だ。必要ならば帝国陸軍参謀本部の命令書を用意してやろう」というと大尉は亜弍へと歩み、屈んだ。
軍人のわりには華奢な手が伸びる。
「相変わらず美しい。徳川家の埋蔵金よりも、お前こそがこの村の秘宝ではないか」
大尉は亜弍の髪を撫で、顎を持つ。亜弍は涙を目に溜めて小刻みに震えていた。
「兵隊さん、乱暴やし嫌いや」
「これでも紳士の部類でね」
「大尉、その娘も接収しましょうか!」
トラックから降りた兵士の誰かがいった。笑い声が聞こえる。
「そうだな。よし、誰か亜弍をジープに運べ」
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