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「あ……っ」
息が上がり、集中力も途切れてきた頃、レディアは足をもつらせて滑らせた。
急な斜面で、いつ転んでもおかしくない場所であり、滑り落ちたが最後、命はないというのが簡単に予想できる場所だった。
「おっと!」
青年の一人が、レディアの腕を取り、引っ張り上げる。
名は確か、ルード。
「危ない危ない……。おい、そろそろ休憩にしないか?」
ルードが、仲間二人に向かって声を張り上げる。
やめて。
貴重な時間を、無駄にしないで。
そう言おうとして、声が出ないことに気がついた。
息が上がって、喉が乾燥しているのだ。
駄目だ。
これでは、王都に辿り着くなど、夢のまた夢ではないか。
レディアは、頭がくわんくわんと、真っ白になる緊張というべきか、恐怖というべきかわからない感覚に陥る。
どうすればいい。
どうすればもっと、すぐにでも先へ進める。
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