序章

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「あそこからがディルティールか」 「はい」  長い銀髪を結わずにそのままにしているせいで、髪を風に弄ばれているその男は、傍らの黒髪の男に問いかけるように言った。  対し、黒髪の男はやや堅苦しく応じる。 それを見て、銀髪の男はわずかに苦笑した。 「そう堅苦しくするんんじゃない」 「それは私の勝手です」 「そうか――まあいい。行くぞ」  彼らの背後にあるのは軍勢。  それほど巨大なものではないが、地方の城一つを落とすくらいなら、たやすく実行できてしまえる兵力である。 「全軍、進撃!」  銀髪の男の声を合図に、軍は進行し始めた。  彼らの進路には、やや小さな屋敷があった。  彼らの力なら、簡単に落とせてしまうような、屋敷が。
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