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「殿下ッ!」
「なに?」
「大変です!」
慌てた様子で、息を切らせて部屋に入ってきたのは、細身の青年だった。
女とよく間違われるほど華奢な体や、線の細い容貌。
長い銀色の髪は後ろで一つにまとめられ、切れ長の深緑の瞳は知性をたたえている。
二本の剣を腰に下げた彼は、レディアの護衛隊長のリューゼだ。
「軍が……国境にッ! ここのすぐ近くに迫っていますッ!」
「なんですってッ!?」
叫ぶようにして問いただしたミリー。
「すぐにこちらも迎え撃つ準備をしておりますが、数に圧倒的な差があり、迎撃は難しい状況です。こうなった以上は、少数精鋭の隊をつくり王女殿下の護衛にあて、殿下には逃げていただくかなくては!」
一息に言いきったリューゼは、レディアを見つめる。
その瞳に宿る光の強さ。
それに気圧される。
レディアの瞳が揺れた。
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