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「わかっ……た、わ」
震える声で、そう答えるのが精いっぱいだった。
けけど、本当は行きたくない。
ここに留まりたい。
皆といたい。
逃げたくない。
「殿下! ではすぐにこちらへ! ミリーどのも!」
リューゼは、レディアを部屋から連れ出した。
そのままレディアの手を引いて歩きだす。
「私はどうすればいいのでしょうか?」
「精鋭の護衛をつけます。とにかく王都へお戻りください! 一刻も早く!」
リューゼは、レディアの手を引いて走り出した。
一瞬転びそうになったレディアだが、迷惑はかけられないと、必死でついていく。
ミリーはリューゼと何か目で合図をして、レディアたちとは別方向へ行ったが、レディアは気付かなかった。
「こちらです」
通された部屋で、二人の青年と一人の少年と引き合わされた。
「王都までこの者たちが護衛します。お前たち、殿下を頼む」
最初はレディアに、あとは部下らしき三人に言うと、リューゼは部屋からとっとと去ろうとする。
「待って。ねえ、リューゼはどうするの?」
慌ててレディアはリューゼを呼びとめる。
リューゼは振り返ってレディアを見た。
その瞳には、強い光が浮かんでいた。
強い、意志の光。「私は、少しでも時間を稼ぎます。――いずれまた、会いましょう」
それだけ言うと、リューゼは今度こそ部屋から去った。
レディアは、嫌な胸騒ぎがするのを確かに感じ取った。
そっと顔を伏せる。
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