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「杉浦さん…… 杉浦さん……
わかりますか? 」
手術台に横たわったままに看護師に起こされた。
「終わりましたよ。
病室まで歩きましょうね」
頭がグワングワン鳴っていた。
朱里は点滴をぶら下げたまま二人の看護師に支えられて手術をした部屋を出た。
「朱里! 」
部屋の前で待っていた一ノ瀬が朱里を支えた。
「ありがとうございます……
後は自分が……」
一ノ瀬に支えられて朱里はベッドに寝かされた。
「3時間程は安静にされてください。
お帰りは5時以降に……」
看護師は点滴を診ると部屋を静かに出た。
沈黙が流れる……
「智洋から聞いたん?」
朱里は白い天井を見ながら言った……
「おぉ……
電話して来た……」
一ノ瀬はパイプ椅子を広げ腰を下ろした。
「怒ってる? 」
まだ、朱里は天井の一点だけを見つめていた。
「怒っとるよ……」
小さな小さな声だった……
「ごめんなさい……」
朱里は涙を見せないように目を閉じた。
「許さん…… 」
もっと一ノ瀬の声が小さく低く朱里の胸に響いて来る……
「そっか……
許さんか……」
朱里は息を抜き静かに一ノ瀬を見て笑った……
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