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思わずもらしてしまった笑みを、一体どうとったのか。
彼の機嫌を尚のこと損ねてしまったようだ。
「わかっているのだろう?」
逸らされたままの視線は頑な。
「私には、お前だけなのだと」
伏せられた、漆黒の瞳が揺らぐ。
形の良い額にそっと唇を落とした。
クッションを抱く腕に、力が篭もるのが見て取れる。
「紅茶が冷めてしまうな」
ゆっくりと、彼から離れる。
慌てたように、不安そうな瞳が追いかけてくる。
再び、距離を詰めた。
「誰にどれ程好かれようと、そんなアレは瑣末だ。お前でないなら、な」
言い聞かせるように囁いて、唇を寄せる。
口付けに応える舌先は、素直。
やきもちゆえの不機嫌は、どうにか直していただけたよう。
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