第壱廻

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校舎裏、湿っぽい小さな庭(と呼べるのかどうか)に設けられた苔だらけの小さな池。 そんな立地条件最悪な場所を住処とする、見た目だけなら完全にそうとは思えない、金魚が私のオトモダチだったのだ。 淋しい奴だと言いたければ言うがいいさ。 金魚のエサとかそんなもの見当たらないから、取り敢えずパンくずとかあげるだけ。 しかも私は毎日パン食べてるわけでもないから、あげても週に二日とか三日とか。 それでも、私が差し出す茶色の残飯に必死に食らいつく奴らを見ていたら、何だか涙が出たのだ。 こんなちっさい池に放されて。 こんな湿っぽいところがお前の世界だといわれて。 逃げる術を持たない金魚は、一生そこで過ごすしかないんだ。 せめて週に数回与えられるパンくずをご馳走として心待ちにしながら。 哀しいな、お前らも。 いやでも私も悲しいから。 一緒に生きていこうじゃないの。 せめて、この三年間だけでもさ。 そうして私は金魚たちの神様になったのだ。 金魚たちは私のトモダチになった。 ‥‥いや友達? トモダチ‥‥うーん。
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