父親と私

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私と父親との死の旅はこうして幕切れです。 私達が居なくなった後、祖母と叔父は捜索願いを出してました。   祖母や叔父が夜行列車で奈良へやってきました。   到着を待つ間父親は寸足らずの棺桶に膝を曲げて寝てました。 背が高かった事とその棺桶しか準備出来なかったみたいです。   今考えると凄く不自然だと思うけど、なぜか父親は二階の間借りしていた部屋に安置されてました。 細くて急な階段の上です。 住職から 『二階上がっちゃダメだよ』 って言われたけど… 階段の一番上にあの黒いスーツを着てニコニコ笑う父親が座ってたんです。 おいでって呼ぶみたいに手招きしてた。 全然怖くなかったし、あら?お父さんそこに居たの? みたいな感覚でしたね。 所詮、七歳ですから本当の死を理解出来ませんよ。   急な階段だからゆっくり上りました。 その間も父親はニコニコ笑ってました。
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