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ピエールは眉ひとつ動かすことなく、無言のまま物差しを左手で掴む。目にも止まらぬ鋭い踏み込みでミッシェルに接近し、そのまま右手のスタンガンをミッシェルの首筋に押し当てた。
「ぐわあぁっ!」
激しい悲鳴を上げて、ミッシェルの身体がびくん、と跳ねた。彼の身体から力が抜け、ぐったりと崩れ落ちる。顔面から床に突っ込む寸前で、ピエールの腕が彼の身体を抱きとめた。
「ん?」
片腕一本で楽々とミッシェルの身体を受け止めたピエールが、ふと眉をひそめた。
抱えたミッシェルの身体が、妙に熱い。風邪か何かで熱でもあったのだろうか。
だが、彼がそれを気に止めたのはほんの一瞬だった。おそらくは単に惨事を見て興奮したためだろう。そう結論付けて、ピエールはぐったりしたミッシェルの身体を肩に担ぎ上げた。
「よし、任務完了。全員、引き上――」
引き上げるぞ、と言おうとしてピエールは言葉を失った。
右の肩に担ぎ上げていたミッシェルの身体が、突然火を噴いたのだ。まるでガス爆発のような青白い炎の奔流。咄嗟にミッシェルの身体を振り落としたものの、すでにピエールの全身は炎に包まれている。
「お、おい! ピエール!」
スキンヘッドのジャンが焦った声を上げるが、すでに火だるま状態となったピエールをどうすることもできず、ただうろうろするばかりだ。その間にも、ピエールの身体はぶすぶすと音を立てて燃え上がっていく。肉の焦げる嫌な臭いが、執務室中に広がった。
ピエールは、悲鳴を上げることさえ許されなかった。あっという間に彼の身体は炭と化し、黒焦げになった残骸が床に転がる。
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