プロローグ

5/5
前へ
/36ページ
次へ
「ひ、ひぃぃっ!」  目の前で仲間が焼かれていく光景に、ジャンが情けない悲鳴を上げた。腰を抜かしたらしく、へなへなとその場にへたり込む。  床に転がったままだったミッシェルの身体は、いまだ火を噴き続けていた。身体が燃えているのとは違う。どういうわけか、ミッシェルの身体そのものは少しも焦げることなく全身の皮膚という皮膚から外に向かって炎を放出しているのだ。  もちろん、彼の身体を覆っていた衣服は全て燃え尽きていた。青白い炎の中に垣間見える白い裸身。それは彼の中性的な容貌ともあいまって、どこか神々しさのようなものを秘めていた。  青い炎の中で、意識を失って穏やかな顔で眠っているミッシェルは、そうとは知らずに周りのものを焼き尽くし続ける。いつしか、執務室の中は隈なく炎に覆われていた。腰を抜かしたジャンには、もはや逃げ場はない。地獄のような光景の中で、ジャンの狂気じみた悲鳴は全てを焼き尽くす炎の音にかき消されていった。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加