ふたりの約束。

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従業員出入り口に降りると、いつものように警備員からの荷物チェックを受ける。 建物の外に出ると、ダイレクトに頬を触る風に、コートの襟を立てた。 着信は、江崎からだった。 そういえば、電話がほしいと言われていたことを思い出した。 いい人そうだったし、かけてみるか。 呼び出し音が鳴るか、鳴らないかで、声がした。 「もしもし」 「着信にかけてみました。良かった。山村さん、ですよね」 「はい、山村です。おかけ出来なくてすみません」 「お仕事中ですか」 「いえ、今終えたところです。江崎さんはお仕事ではないんですか?」 「僕は今、出張でこっちに来ているんです。今はやっと自分の部屋に戻れたところで。どこか、旨い居酒屋とかご存知ありませんか」 「えっと、今、どちらにお泊りなんですか?」 「錦糸町駅前のショッピングビルの隣のマリネットホテルというところです」 「それなら、私が働いているビルのお隣にお泊りだったんですね。電話で良ければ、道案内しましょうか」 「いえ…今からお会いできませんか?」
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