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「私は終電で大丈夫です。と言っても、あんまり時間はないんですけど…」
そう言って立ち上がった未来は、まだ座っている江崎を促した。
ホテルを出ると、月が瞬いていた。東京の空は狭い。でも、活気に満ちている。街灯が所狭しと並んでいて、何かに向かって並んでいる見たいだと、未来は思う。
歩き出すと、自然に江崎が歩調を合わせてくれていることに気がついた。スーツ姿のときよりも少し、幼い横顔が未来の心にすっと入ってきた。
江崎の持つ独特な雰囲気はきっと生まれ持った、彼の優しさなんだと思う。長身なのに猫背なところとか、前を見据える茶色い眼球とか。
ふたりは歩くのが早かった。
江崎は未来の足元を見て、『こんなヒールの高い靴で、よく歩けるな』と感心していた。
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