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「失礼しました」と出て行く店員を見送った未来は、グラスを差し出して「乾杯」と言った。
「店員さんと仲がいいんですね」
生ビールを一口飲むと、身体の力が抜けそうだった。そうか、俺、疲れてたんだ。
江崎は黄色いシャツを着ていた。未来は、この人は自分に似合う色を知っているんだな、と思った。もちろん、未来も彼には黄色が似合うと思う。
「古い子たちはよく知っています。新しい子はよく分からないですねどね」
『未来スペシャル』という、青いカクテルは氷と青がよくマッチしていた。まるで、未来のようだと、江崎は思った。
「そのカクテル、山村さんのイメージにぴったりですね。爽やかで、でも少しセクシー感じで。あ、すいません」
思いもよらない言葉に未来は少し驚いた。
「そうですか?昔、毎日のように来ていた私に、マスターが作ってくれたんです」
「そうなんですか、素敵なマスターですね」
また訪れてしまった沈黙を打破したのは、またも江崎だった。
「山村さんのお名前は『みく』さんですか?『みらい』さんですか?先ほど、名刺頂いたとき、聞こうと思ったんです」
「私は『みらい』です。やっぱり、名刺にふりがな入れたほうがいいですね」
「いや、すみません。俺、同じ字を書く友達が居るんで、どっちなのかなって」
あまりにも申し訳なさそうに言う江崎に、心が締め付けられた感じがした未来だった。
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