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2階に着いて、フロアに出るための重いドアを開けると、灯りの消えているショップがもの悲しげに軒を連ねている。
毎日この光景を見る度になせが、切なく胸がざわついてしまう。
開店までにはまだ2時間あった。
非常灯しか点いていない通路を真っ直ぐに進んでいくと、突き当たるのが未来の店だ。
もちろん、まだ誰も居ない。未来はレジと連動しているパソコンを起動して、在庫が収納されている事務所の鍵を開けた。
「はぁ。」
ドアを押す手は重い。
ため息ばかり出てしまう。デスクの上には、来週入荷する商品のリストが置かれていた。
椅子に鞄を置くと、未来は在庫を調べ、発注をかける。毎週月曜日の日課だ。
壁一枚で仕切られた倉庫の中の膨大な量の商品を目にすると、見慣れているとはいえ、疲れてしまう。発注専用の機械から漏れる規則正しい電子音は、いつも、未来を打ちのめす。
発注自体に時間はかからない。一つ仕事を終えると、未来はデスクで缶コーヒーを飲む。
これは毎日の日課だ。
従業員入り口近くにある、有名メーカーの自販機で買ったそれを最近好きになり、そればかり飲んでいる未来は、カタログに目を通すことにした。
「新作はと…」
独り言を呟いていると、店内から物音が聞こえた。
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