出会い

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─3月─ 「良多!早くしろ!!」 「あぁ分かってるよ」 自分の部屋で着替えを済ませ玄関へと向かう。 「父さんも仕事が終わったら行くから」 「分かったって」 ─バタン─ 玄関の扉を閉め、2人共左右違う方へと歩み出した。 冬に降った雪や氷が溶け、次第に暖かくなり、植物は芽を出す時期。 物事の始まりの時期。 俺達家族は、新しい出発の意味を込め、この街に引っ越しをしてきたばかりだ。 しかし、季節の替わり目に忙しかったためか、元々体の弱い母が調子を崩してしまい、今は入院している。 「どこから行くんだっけ?」 初めて出歩く街に見とれてしまい、病院への道のりを忘れてしまった。 町の人に道を聞こうとも思ったが、早朝の為か、人が見当たらない。仕方なく、自分のカンで歩き出す。 少し歩くと、坂に差し掛かった。坂の行く先を見つめるが、かなり長い。坂を上りつつ町の方を眺める。所々に緑があり、とても綺麗な街だ。  夜だったらもっと綺麗だろうか? そんな柄でもない事を考えながら坂を登っていた。
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