6人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
やはり、出来合いの紅茶では風味もイマイチ。
だからといって執務室までティーセットと茶葉を取りに戻るわけにも当然いかず、この事件の真相を突き止めるまでは我慢せざるを得まい。
そんなことをぼんやりと考えながら、永世中立劇場のロビーで缶の紅茶をすすりつつ、しばし休息を取っている時だった。
不意に、背後からすっぽりと抱きすくめられてしまう。
「なっ……!?」
熱いほどの体温と力強い腕の持ち主で、こんな悪ふざけを仕掛けてくるような手合など、誰だか考えるまでもなく。
「ロウ捜査官……」
呆れ声で呼びかけると、アタリとでも言いたげに、胸にまわった腕に力が篭もる。
「どうしたと言うのだ」
物言わず訴えてくる様子が、幼い駄々っ子のように感じられて。
問えば小さくかぶりを振る。
肩口に乗せられたあごがくすぐったかった。
最初のコメントを投稿しよう!