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 このままボロクソに負ける可能性すらあります。  間山さん強すぎます。返し技で上段打ちとかマジでイケメンすぎです。あんな先輩と共学のムツダ、うらやましいなぁ、クソっ。代われ、あたしの代わりにうちの主将と呪怨観てくれよっ。てゆうか呪怨観ようとかマジないわー! 絶対あたし無理だよ! 予告編だけで弟と部屋が同じだったことを数日間両親に深く感謝し続けたんだぞ! 深夜に! 人知れずッ! せめてゾンビとかそっち系だったらね、あいつらは空手駆使すればまだ勝てそうだもんね。いやいやそもそも普通の女の子はファインディングニモだろうが麻美谷ヒジリのボケナス! 少なくともジブリ! トトロ! ……あー、でも冨田くんにホラー映画とか誘われたら自分どうすんのかな。あたしリアルにホラー駄目だし鑑賞中に「こわーい」とか抱きついたりしても、い、い、い、いいんだよな? うわああああああ本番じゃ絶対できねえけど! それ以前に誘ってもらえない!  と、そんなこと考えながら、緩んだ面包のベルトを劉は締めなおした。  それから、集中するために一度間山慈恩の足を見る。 『(……いったん、慎重に行くか)』  彼の動き自体は見えている。 ただ、恐ろしく的確で、突進力もあるから、あまりカウンターを取る欲を出さずに切る所は切っていかないと厳しい。  いきなり三ポイントも奪われてしまったが、時間はじゅうぶんに残ってるし、落ち着いて一つずつ返していけばいい。  いくら負けてようが、勝つように戦うだけ。 『(…………)』  やがて、面包が整うと劉は再び、元の無心に染まっていった。      ▼△  男子と女子だから、というハンディキャップとは関係なく間山慈恩の強さは本物だとベニはとっくに感じていた。  二度も組手をした相手だ。イヤでも伝わってくる。  そして、劉紅との試合を見ていても再認識させられた。彼の強さは、おそらくベニが想像する伝統空手とは一つや二つ、階層が違う。  高校男子のトップクラスにいる選手。  性格があんなんでなければ、男嫌いなベニでも彼を強く尊敬していたかもしれない。人格面では徹底的に軽蔑。無神経で童顔でドSで、それらが化学反応起こして気持ち悪いことになってる。  でも、同じ部活にあれほど強くて嫌な奴がいるのは喜ぶべきだと思う。
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