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たぶん、後者かな。気さくで男らしい性格のくせに、こういうことではいちいち照れやすいタケちゃんコーチの様子がかわいくて彼はコウのずっとお気に入りだった。あーあー急に東京に行きたくなくなってきた。これが《センチメタル》ってものなのかよ。
思ったままに訊くと、タケちゃんコーチはなんとも言えない笑顔でコウのポニーテールの根本をクイッと引っ張り、コウは「うう」と言い、彼はただ一言。
「センチメンタルだよ」
――「決まった!」という複数の声援が市立体育館に響き渡る。
リュウ・ホンは《観空大》のクライマックス、大跳躍までを華麗に決めて、演技を終える所であった。
▽▲
市内、三道場総合空手大会。
個人型、子ども・女子の部。
一位、劉紅(初段)
二位、陸田紅(二段)
以下、略。
▽▲
ついでに言うとリュウ・ホンは組手部門でも優勝(圧倒的)だったのだから相当な空手少女と言えた。そのうち空手道がオリンピック種目として定着した将来は全国ニュースで見かけるかもしれない。ちなみに、コウは組手には出場していない。小学生時代、年下の男子に殴られて鼻血を出して以来、どうにも組手は嫌いになってしまった。
市内にある三大空手道場(師範同士がライバルらしい)が春と秋に開いている合同大会にコウが参加するのも今年で最後だ。毎年毎年、ついには代わり映えすることがなかった己の順位を今年も与えられたコウは胴着姿でポッキーをかじりながら二階の小体育館で道場の小学生が持ってきたグラップラ-刃牙を一緒に読んでいたのだが、やがて、そろそろ今大会の大目玉『組手部門・一般』の決勝が始まるので第一体育館に向かおうかと考えた。決勝に臨むのはコウの道場のジャニーズ系だった大学生、タケちゃんコーチだ。コウは勝敗よりも、対戦相手が刃牙の漫画に出てくる夜叉猿(さっき読んでた部分に登場してたゴリラ。超つええ)みたいなマッチョの丸田さんだからタケちゃんコーチの可愛い顔に傷が付かないか心配だった。顔面を保護する面包を装着していても場合によっては前歯が折れたりする組手がコウはやっぱりおっかない。
それでも観客席よりずっと近いフロアで応援しようと思い、コウが一階に降りると、
「お」
ちょうど階段の所にリュウ・ホンが立っていた。
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