歪み

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「上手く誤魔化せたから良かったけど…もし保健室で聞いてたヤツが言いふらしてたりしてたら、お手上げだったよ。たまたま俺のツレだったから助かったけどな……。」 海藤は、突然立ち上がると部屋の中をせわしなく歩き始めた。 「……もし、お前のせいで本当のことがバレたら、今頃どうなってたと思う?今までの俺の努力がすべて……水の泡さ!!」 ガシャーン! と、海藤がテーブルをひっくり返し、コーヒーカップが床に飛び散る。 麻衣は、びくりと身体を震わせ、少しでも海藤から離れようと身を捩った。 「――小さい頃から俺は必死だった……何でもできる兄貴と比べられて……親に認められるために、人よりも何倍も努力してきた……勉強も運動も、学校では良い生徒を演じて……。」 話すにつれて、だんだん海藤の息づかいが荒くなっていく。 .
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