歪み

10/16
前へ
/292ページ
次へ
「…くそっ、…くそっ!お前となんか付き合うんじゃなかった…。別に女なら誰でも良かったんだ…お前を選んだのは、顔が好みで、大人しそうだっただけだ……それなのに、まさか俺を裏切るとは……。」 海藤は、ぶつぶつとまだ部屋の中を歩きまわっている。 その言葉を聞いて、全身から血の気が引いていくのを感じた。 殴られた痛みも感じない。 あたしのこと、好きじゃなかった………。 信じられなかった。 付き合って欲しいと言ってくれたあの言葉は嘘だったのだ。 殴られた痛みのせいではなく、悲しくて、涙が溢れる。 信じていたのに。 どんなに殴られても、海藤のことが好きだった。 優しい彼を知っていたから――。 溢れる涙が頬を伝い、床を濡らしてゆく。 .
/292ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6131人が本棚に入れています
本棚に追加