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何が起きたのか分からなかった。
ゆっくりと目を開ける。
そして、慌てて自分の腕を見た。
注射されたような痕跡も、痛みもない。
助かったのだ。
思わず息を吐き出した。
安堵感からか、身体中の力が抜け、ぐったりと壁に身を預けた。
すると、
―――トン、トン……。
と、階段を上ってくる音がする。
誰か帰ってきたのだ。
その音は段々近づいてくる。
海藤は、何かに怯えている様子で、
慌てて注射器を隠し、ひっくり返したテーブルを直していた。
そこに麻衣がいることなど、忘れてしまっているかのようだった。
――コンコン
と、ドアがノックされる。
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