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「佑一、帰ってるのか?」
「あ、うん、兄さん今日は早かったんだね。」
海藤は、大量の汗をかき、顔は真っ青だった。
「玄関に靴があったけど、誰か来ているのか?」
兄の言葉で、麻衣がいることにはじめて気づいたかのように、さらに恐怖の色を表した。
「そ、そうなんだ…同じクラスの友達…もう帰るところで――。」
「そうか。なら早く宿題しろよ。明日の予習も。塾のテストも近かったよな?お前のできが悪いと俺の貴重な時間がなくなるんだ。」
海藤の話を最後まで聞かずに、言いたいことを伝えると兄は自分の部屋に戻っていった。
海藤は、ドアの前で突っ立ったまま、俯いている。
その身体は、震えていた。
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