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海藤は、突然麻衣を縛っていた紐をほどきはじめた。
手が震え、汗もかいているせいで、なかなかうまくはずせないようで、苛立っている。
麻衣は、そのの尋常でない様子に違和感を感じた。
家族に、自分がこんなことをしてるなんてバレたらまずいのは当たり前だ。
だが、それ以上のものを感じた。
海藤は、明らかに、自分の兄に怯えている―――。
手足の紐をほどき、口を覆っていた布をとると、麻衣を強引に立たせ、無言で玄関へと連れて行く。
突然動かされて、殴られたところなどが痛んだ。
玄関に着くと、ドアを開け、乱暴に外に押し出される。
外はすっかり日が暮れて、闇に包まれていた。
海藤は、ゼェゼェと肩で息をしていた。
そして、麻衣に向かって言い放った。
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