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駅が近づいてきたのか、会社帰りのサラリーマンやOLの姿が目に入る。
麻衣は、無意識の内に家に帰ろうと、駅に向かって頼りない足取りで歩いていた。
が、ふいに足がとまる。
自分は今、どんな姿をしているんだろう……。
そっと、殴られた顔を触ると、鈍い痛みが走った。
熱も持っており、腫れているようだ。
手足は所々切れて出血しているし、手首には縛られたときの跡が痛々しく残っている。
こんな格好で帰ったら、おじさんとおばさんに心配をかけてしまう……。
家で待っているのが本当の親だったら、思う存分泣いて、話を聞いてもらったかもしれない――。
時間を確かめようと携帯を探すために鞄の中をゴソゴソと探る。
携帯を見ると、メールを受信したことを知らせるランプが点滅していた。
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