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そして、何よりも深く傷付いたこと――。
海藤は、自分のことを何とも思っていなかった。
女なら誰でも良かったのだと……おとなしそうだったからと……海藤はそう言った。
単なる暇潰しだったのだろうか。
2人で過ごした時間は全て偽りだったのだ。
好きだと言ってくれたことも、あの優しい笑顔も全て。
忘れよう。早く忘れるんだ。傷が治るように、嫌なことだって、記憶から消せばいい。時間が経てば、忘れられる――。
大丈夫。
けれど、目からは次から次へと涙が溢れてくる。
上を向いて涙を止めようとするが、無駄だった。
もう、止まらなかった。
思い切り泣いた。
子どものように、声を上げて泣いた。
辛い記憶を、海藤への思いを忘れるために―――。
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