プロローグ

2/2
11人が本棚に入れています
本棚に追加
/41ページ
「おねぇさん」 そう呼ばれて後ろを振り返ると、小柄な男の子が立っていた。 「どうしたの?」 屈んで目線を合わせ、尋ねてみた。 すると、その言葉に男の子はニッコリ笑い 「美味しそうな匂いがするね。おねぇさんも 僕に分けてくれない? おねぇさんの記憶」 そう言い終えると、額に手を置いた。 「何よ。この話。」 私は顔を軽く顰め尋ねた。 「最近有名なこの町の都市伝説。」 相手はさらりと答えた。 その態度に、私はため息をつく。 「私が怖い話ダメなこと忘れた? 三咲が好きでも、私はダメなの 私の前で話すの禁止。」 三咲は一瞬呆れた顔をしたが、すぐに元の顔に戻った。 そして、 『この程度が怖い?怖いポイントが分からない。』 と呟いていた。 「…用件は私に不快を味わわせること? そんな用事なら帰るわよ?」 私は席から立ち上がり、言った。 実は今放課後。 三咲に、帰る直前に声をかけられた。 「大事な話。聞いて損はしない。」 っと。 …損だよね? 不快を味わったうえ、時間まで無駄にしたし。 そんな事を考えていると、三咲が 「今から、本題に入るから。 ちゃんと聞きなさい。彩香 あんたが一番危ないから、話しているわけだし。」 珍しく、長文を話していました。 若干気になる表現もあったけど、今は話を聞こうじゃないか。 「分かったわよ… 何?本題って。」 三咲は普段と違う、真面目な顔をして 「『記憶』大切にしな。決して売らないで。」 と言った。 「記憶なんて売ったりできないわよ。バカにしないでよ!! 私もう帰るから」 かばんを手にして私は教室から出た。 後ろで三咲が何か言っていたが、聞こえない振りをした。
/41ページ

最初のコメントを投稿しよう!