第1話 帰り道にはナンパに注意!!

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第1話 帰り道にはナンパに注意!!

「なによ、バカにしたようなこと言って。 そんなことがあるはずないじゃない!!」 私は、そのような事を呟きながら大通りを歩いていた。 その時、突然肩を叩かれ 「なによ!?」 少し苛々していたので、荒い口調で答え振りかえる。 「ッ。」 そこには少し目に涙を浮かべた少年が。 きっと私の口調がいけなかったのだろう…。 「あ、ゴメンね。どうしたの?」 少し猫なで声で言ってみる。 潤んだ瞳で私を見ながら、何かを差し出してきた。 「こ、これ。落としてたよ。」 「あっ!」 それは定期だった。 苛々していたので、まったく気が付いていなかった。 「ありがとう、これがないとお姉さん帰れないところだったよ。」 定期を受け取ろうと少年に手を伸ばす。 その時一瞬触れた手の冷たさに、少し慌てて手を離し 無理やり笑顔を浮かべて尋ねた。 「ずいぶん手が冷たいのね。ずっと外で遊んでいたの?」 少年は首を振った。 「そっか。そろそろ寒くなるし、お家に帰ったほうがいいよ。」 また少年は首を振った。 「…。そっか、じゃあ早く帰るんだよ。お姉さんは帰るか…「ダメ!!」」 少年が慌てたように口を挟んだ。 「えっ…?」 私は少し困って言い聞かせるように話した。 「お母さんやお父さんも心配するよ。 お姉さんのお母さんやお父さんも心配するし。」 そう言っても、首を横に振り目に涙を溜めている。 これでは、後味が悪すぎるため、 何が良い方法はないかと一生懸命考えてみた。 「あ!!そうだ。定期のお礼にまた今度会わない?」 少年はその言葉に目を輝かせて頷いた。 私は少し安心して 「じゃあ、今週の土曜日にこの場所で」 と約束した。
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